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AiCTコンソーシアム設立趣旨
会津若松市が復興事業のシンボルとして2011年より始めたスマートシティプロジェクトも10年を迎えた。
現在会津のモデルは日本のトップランナーとされているが、今後日本のモデルとなるべく今後の10年を費やしスーパーシティへのステージアップを実現するために、一般社団法人AiCTコンソーシアム(以下SACと云う)を設立する。以下、本法人に関係する全ての方々に共通認識として頂きたい全体概要を示す。
スマートシティは地方創生を実現するためのプロジェクト
下記の図は、会津若松市のこの10年のスマートシティの取り組みと、スーパーシティを目指してステージアップさせるべき領域を示したものである。
これまでの10年は行政が持つオープンデータを活用しやすくすることで、地域DXを実現するための基盤づくりに多くの時間を割いてきた。オープンAPIを活用し、会津若松市に関するアプリやデータを市民に無償で公開、提供しているWebサイト(DATA for CITIZEN)を整備した。人材育成も兼ねたデータハッカソン開催によるオープンデータ活用モデルの啓蒙と検証も継続的に行ってきた。そして一般市民とのインタラクティブポータル(会津若松+)によるコラボレーションを開始し、市民から事前に承諾を得るオプトインモデルの基盤を整えるとともに、その重要性を確認してきた。
また、スマートシティ会津若松の活動を全国に広くオープンに伝えることで地域を訪れる「交流人口」が増大し、さらにスマートシティ会津若松に参加を表明する企業が増えたことで「関係人口」も増えた。ここまで、第1ステージの集大成として2019年4月には、会津若松市内にICTオフィスビル「スマートシティAiCT(アイクト、以下AiCT)」が開設され、今では41社が入居し満室となった。人口が減少し地域の新たな産業基盤が必要なことから、東京都内のデジタル企業移転や集積を実現した。この活動は、 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部 の取り組み指針にあてはめると「まちづくり」にあたる。
第1ステージでは首都圏などからデジタル企業を移転・集積させることがゴールだったのに対し、第2ステージで重視しているのは移転してきた各企業と、もともと地元地域に存在していた企業によるコラボレーションだ。第2ステージの代表事例として、地域の中小製造業向けに生産性30%向上を目指した共通プラットフォーム「コネクテッド マニファクチャリング エンタープライゼス」(CMEs)をスタートさせた。また、地域の経常利益は地域で再投資できるようにするために、ネットサービス企業を中心に支払ってきた多くの手数料問題を抜本的に解決し経営基盤を改善する。これは、まち・ひと・しごと創生本部の指針の「しごと」にあたる。AiCTを中心に移転してきた各企業と、地元企業がコラボレーションすることで、 既存企業のDX 化による生産性向上や新たな経営モデルへの刷新を目指し、地域の将来を担う若手経営者とも連携している。
そしてスマートシティ・スーパーシティの本質的な目的である「ウェルビーイング(Well-being:幸福)」を追求するプロジェクトにも着手した。これは、まち・ひと・しごと創生本部の指針の「ひと」にあたる。デジタルにより人命を救うデジタル防災「マイ ハザード」や、会津地域全体でヘルスケアに取り組む「バーチャルホスピタル構想」などだ。
スマートシティの計画の策定に着手すると、「ウェルビーイング」「シビックプライド」などの実現に一気に向かおうとするケースも見られるが、SACは、市民の多くに賛同してもらうためには地域の継続的な経済基盤を再生させて、市民がその状況に腹落ちすることが必要であると認識し、「まち」「ひと」「しごと」の各階層の充実を確実に進め、働く場の整備である産業政策が連携していなければならない。
スーパーシティはスマートシティを推進するうえで、障害となった規制を緩和するための国家戦略特区であることをあらためて認識する必要がある。スーパーシティではデジタル化の先端的な取り組みを実装しなければならない以上、確実に実現するために綿密な計画や体制づくりが重要であり、住民の合意も重要となる。市民が、スーパーシティが実現した後の姿を想像できるようにもしなければならない。
SACは、10年の経験や実績を踏まえ、日本のあるべきスマートシティモデルを会津をフィールドとして実現するために、各社の垣根を越えて「10のルール」を遵守してプロジェクトを推進するための21世紀型の新たなアライアンス団体である。
日本のITにおけるこれまでの「5つの誤り」
1. オープンシステムをフィロソフィーとして取り入れられなかった日本
1990年代、シリコンバレーを中心としたSun、Oracle、CISCOなどIT新興企業は、これまでの巨大ITベンダーの高価な独自システムに対抗し安価なオープンシステムの提供を始めた。この大きなうねりは世界中で起こったが、日本でも多くのコンピュータメーカー、家電メーカーまでもがオープンシステム(UNIX)ベースのハードウェア(WS/サーバー)を開発し、いわゆるダウンサイジングが進行して行った。その流れはオープンソースモデルにも注目が集まり、LINUXをはじめJava等言語までもOSSへと流れを作った。この哲学は世界のフラット化へ提言へも繋がっていった。そして、シリコンバレーではオープン化の流れをさらに加速しクラウド化へと進化を止めなかった。その間、日本はどうだっただろうか?
大手コンピュータメーカーは、中間機種である、いわゆるオフコン市場をオープンシステムに置き換えること、一部の情報系メインフレームのダウンサイジングにオープン化の流れを利用したに過ぎず、独自システムは温存され、真のオープン化は進まなかった。また、OSSを積極的に取り入れたのはITベンチャー企業たちの大手との差別化要因になってしまい、IT業界全体の動きにはならなかった。一方、日本政府では自民党IT戦略特命委員会が世界に先駆けて「霞が関クラウド」の方針を打ち立て、巻き返しを図ろうとするが、直後、民主党政権に交代すると、その方針は予算とともに仕分けされるはめになった。日本はオープン化という大きな技術革新を取り入れることに失敗してしまった。多くの意思決定者が世界の潮流を本質的に受け止めることができなかったことが原因だろう。そして、シリコンバレーでは、その間も着々とGAFAが成長し始めていた。2. CIOを戦略担当としてポジションにしなかった日本
これまで幾度となく、CIOのポジションやミッションの世界的調査が実施されてきたが、米国はCIOを戦略的ポジションとし、ITを活用した経営戦略立案をミッションとして与えてきたが、日本は情報システム管理部門の延長線上にポジションさせ、社内の効率性向上を多くのミッションとしてきた。経営の中枢にITをポジションさせた米国と、そうしなかった日本の違いは、IT投資額にも大きな開きを生み、両国のIT格差は拡大した。そして、日本ではITによる経営革新に踏み切ることなく、企業内でも政府内でもIT部門のポジションを著しく低く小さく留めることになってしまった。政府はCIOやCIO補佐官を設置したが、その権限や予算は制限され、大きな役割を果たす環境を持たせてもらえなかった。(これまで担当された方々には、現状の権限下で調達改革など実施したことに敬意を表したい。)さらに業界ではエンドユーザーコンピューティングと新たな営業先を開拓し、中核ではなく現場の効率化のためのIT導入が加速させて、日本の現状である「ITのバラバラ導入」が始まっていった。2000年ごろからこの状況の反省から全体最適化(EA)の考え方が導入され、CIOの重要性が再度見直されたが、あくまでも最適化のミッションであり、やはり経営の中枢にポジションされることは少なかった。
3. 日本の顧客第一主義が生んだ個別システム
上記した、政府、IT業界とユーザーのIT部門の状況からわたるように、日本ではITを戦略的ポジションでとらえていなかったので、目先の業務案件に対応する形で、ユーザーのCIOから要求仕様が提示され、多くのケース、安価な構築費用を提示した業者が選定され業務委託されてきた。IT業界側もユーザーの要求仕様通りにシステム構築を行ってきた。この状況下では、全体戦略としてのオープン化やフラット化を念頭に置いた標準化の議論は起きることはなかった。また、「ベンダーロックイン」という言葉で、ベンダーが意図的にユーザーを囲い込んでいるように言われることがあるが、実態は、「顧客第一主義」という方針が、顧客それぞれの受託型のシステム構築体制となり、結果的に個別システムが乱立し「ロックイン」状態になってしまったのだろう。この状況は、ERPの初期導入の時期にユーザー毎のカスタマイズが横行し、導入トラブルが多発した結果からも日本のIT業界の体質が受託型であることが窺える。悪しき慣習としては、「ロックイン」状態を営業的に囲い込み手法として一部用いてきたこと、各ベンダーの各地の代理店が下請けとして保守メンテナンスを担当するという硬直化した構造を創り上げてきたことで、現在も継続しいていることであろう。そして、この状況が、長年の課題である自治体システムの共通化の議論を革新的に進めることを妨げる障害として、地域ベンダーの存続問題にすり替えられているのも事実である。
4. ITを中核的な戦略として位置付けてこなかった日本
これまで書いたように、日本はITを重要ポジションに位置付けてこなかった。2001年森政権がIT基本法を成立させて20年の節目の年になるが、この間、オープン化やクラウド化といった産業革命的タイミングが幾度かあり、戦略転換するチャンスはあったが、そのどれもが、バージョンアップやアップデート的な小さな事象としてとらえてしまい、不連続的な大きな社会的革新をもたらすことであると認識されなかったのである。政治家の方と話すとよく耳にした話だが、「ITは票にならないから選挙は大変、当選しても政治の政策の中枢にはならない」と。まさに、国民も興味がなければ、興味を持たせる努力も無駄であるといった、双方の諦めの状況が、この問題を長引かせてきたのだろう。結果この20年、IT業界側は世界から大きな後れを取り、一部のネットIT企業の世界が別の業界かのように、新しいデジタルサービスを立ち上げ、IT業界を2分する形で並走してきている。
5. なぜ、国民に使われないシステムが横行して来たのか?
B2Cサービスを進めてきたECベンダーを代表するようなIT業界メンバー、B2Bを中心としてシステム開発してきた業務系のIT業界メンバー、そして、霞が関や自治体システムを構築してきた行政業務系のIT業界メンバー等々、IT業界側も縦割りの組織内でシステム開発してきたため、担当業界知識は十分に蓄積されてきたが、業界横断型のコネクテッドモデルに経験が乏しいと言わざるを得ない。例えば、ユーザーである行政はG2Cのサービス開発の委託をこれまで通りのX2Cを経験して来ていない政府自治体担当に依頼してきた。IT業界側も行政部門が対応してきた。X2Cは利用率が最も重要なKPIであるが、行政もIT業界担当も未経験なため、現状のアナログの手続きをそのままIT化してしまってきた。IT業界側がECを経験してきたメンバーを中核に加えればこうはならなかっただろうし、発注側である行政も成果であるKPIに利用率を入れておけば、利用率を向上させるために何ができるかを必死に考えることにもなっただろう。未経験者が結果責任を負う必要がないシステムを開発すれば、それは失敗に終わることはそれほど予測するのは難しいことではないように思える。
社会全体のDXは、すべてが繋がる全体最適化が求められている。そうであれば、国家戦略の中核になければならないし、業界側もそれぞれの経験者が一堂に会して対応しなければならない。その旗振り役の中枢が「デジタル庁」になるのであろう。これまでの失敗を自分事として反省し、IT業界全体で日本社会のデジタル化にまい進することが出来れば、デジタル庁は成功を収めることができると考えている。
以上がこれまでの5つの「誤り」だが、日本のDXを成功させるためには、この5つを重要ポイントとして変更することである。
スマートシティでの企業のポジション
SDGs、ESGが言われる中で、企業のビジネスはレスポンシブルでなければならない。アクセンチュア・リサーチが行った、2019年9月の調査結果であるが、「パーソナライズされたより良いサービスであれば個人情報を行政等と共有して構わないか?」という問いに対して、日本人は79%がYesと回答した。
この問いで明らかなように、個人情報を共有することを許容している相手は「行政等」なのである。トロントの例でも分かるように、市民は個人情報を企業と共有することを拒絶したのである。その後、情報活用が常に問題視され、米国GAFAも個人情報の扱うスタンスは大きく変わってきている。例えば、会津のスマートシティプロジェクトでコラボレーションしていただいている決済サービスは、決済データの活用を地域に還元してくれる企業を選択した。多くの決済サービスベンダーは自社のビジネスの為のみにデータ活用するが、そのビジネスはレスポンシブル・ビジネスとは言えない。このポジションがスマートシティにおける企業のポジションである。ネットでのショッピングや予約サイトのビジネスの多くは、ユーザーの利便性を格段に向上させ喜ばれているが、その手数料がサイトへ出店しているテナント(加盟店)の課題とされている。3方良しとは言い難いだろう。参加している誰かや何かを犠牲にしたビジネスもレスポンシブル・ビジネスとは言えない。SACメンバーは自身のビジネスのポジションを再認識してほしい。
スマートシティ・スーパーシティは、地域DXプロジェクトとして位置付けられる。地域の多くの成功事例が標準化されて連携されることで、日本社会のDXは実現するのは間違いないだろう。今求められるのは関係者全員のマインドセットチェンジである。
オープン・フラット・コネクテッド・コラボレーション・シェアの思想で策定した、日本のあるべき、スマートシティ・スーパーシティ・モデルをSACは追求する。
© 一般社団法人AiCTコンソーシアム